雪の山また山から始まる。その雪が美しいのだけれど、冷たくて寂してくて、それだけで過疎の町がどんな状況に置かれているか感じさせてくれる。都会で就職して帰ってきた路子(中尾ミエ)が、母親に真実を打ち明ける場面なども、すこし逆光気味で印象深い感動シーンになっていて、映画を撮る心意気のようなものを感じた。
また、薫(吉行和子)たちに乞われて、料亭の女将が言う「頭を下げられるのは嫌い。でも、教えてと言う人に教えないのはもっと嫌い。」というセリフや、まだまだ男性職場の市場において仲買で身を立てている裕香(村川絵梨)の、へなちょこ農協職員江田(平岡祐太)に対するダメ出しなど、頑張っている女性の心意気がストレートに伝わってきて胸の空く思いがした。
薫と路子の幼なじみ花恵(富司純子)は、老人ホームに入れられるのが嫌で何とか自立できるだけの収入がほしい。彼女は、この作品の鍵になる人物だ。老人、女性、妻、葉っぱ、過疎地だからといって(基本的に何ごとにつけ)バカにされるのは嫌なのだ。彼女なりのやわらかな戦い方でもって、いろんな人に絡んで物語を推進していく。
花恵を天敵と思っている(笑)輝雄(藤竜也)は、薫がおとなしいのをいいことに夫唱婦随を実践してきたが、ついに薫が本領発揮。裕香と江田の出来たてカップルをして「夫婦ってわからん」と言わしめた(笑)。
途中、薫のハウスが焼けたり、山を売る売らないで輝雄ともめたり、もたつくところはあったけれど、老いも若きも夢中になれる仕事があれば、そこをベースに輝けるという話だったと思う。
監督:御法川修
(2012/10/07 TOHOシネマズ高知5)