バズ・ラーマン監督らしいキンキラキンで面白かった。作り手のエルヴィス観だろうけれど伝記映画としても面白かったし(黒人居住区で育ったとか、マネージャーに搾取されていたとか初めて知った)、音楽映画としても大変よかった。社会的な背景も自然と描かれていて、ラーマン監督の最高傑作ではなかろうか(?)。
いっしょに観た妹も楽しんだ様子で「休憩するところがなかったね」と言っていた。なるほど、休みどころがないのはラーマン作品の特徴だ。
キング牧師やロバート・ケネディの暗殺事件のところでは、日本で先頃に起こった恨みによる射殺事件のことが頭をよぎり映画の世界から現実に引き戻された。
トム・ハンクスが演じた詐欺大佐を抜きにしてもショービジネスの世界でスーパースタアとして生き残っていくのは並大抵のことではないのだなあと、しみじみ感じさせられた。自然とマイケル・ジャクソンが思い浮かんだり、マドンナはえらいと改めて思ったり。本作のエルヴィス(オースティン・バトラー)はやさしいし、海千山千の世界を渡るには無垢な感じがした。どうしても戦略が必要な世界というか、欲が絡んだ世界であることに自覚的でないと才能だけでは潰されかねない。
本物のエルヴィスが最後に登場した。晩年のせいか目に力がなく身体もむくんだようになっていたが、大変魅力的で、かつ、その歌唱に圧倒されて涙が出そうになった。本当に歌のパワーってすごい。
(2022/07/18 TOHOシネマズ高知2)