外事警察 その男に騙されるな

暗闇で徐昌義(田中泯)の目だけが光るシーンがすごかった。
住本(渡部篤郎)が 安民鉄(キム・ガンウ)に「甘いんだよ」とバカにされながら甘さを貫いたのも良かった。
奥田果織(真木よう子)の低い声に痺れた。
内閣官房長官(余貴美子)の最後の記者会見には拍手した。
時代設定を60~70年代にしておけば、もうすこし現実味があったかもしれない。
伊方原発の再稼働に賛成する県内首長の多さにガックリ来た日に観た。

監督:堀切園健太郎
(2012/06/03 TOHOシネマズ高知2)

灼熱の魂

物語のパワーが凄い。
母が事実を知りながら、そんなむごい遺言をするものだろうかと疑問に思った。それについては、生き別れの息子に愛を伝えたかったというポジティブな答えを考えてみたが、あのような遺言は現実的ではないような気がする。しかし、焼け焦げた魂からの遺言を、のほほんと暮らすこちらの尺度で測っても意味がないように思う。それより、私の“のほほん”フィールドと地続きな世界から抽出された「現実」を紡いで、こんな物語ができるとは!圧倒されたし、恐れ入った。

ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)の身に降りかかった災いは、いったい何人分?というくらい過酷にすぎる。考えてみれば『エレニの旅』のエレニのようにおとなしく生きていても、人間、とんでもない目に遭うのだ。ナワルのように異教徒と恋に落ち、内戦勃発のさなか息子を捜して危険地帯へ行き、要人暗殺にまで関わってしまう行動派は、災厄を被る確率がより高くなるのかもしれない。いずれにしても社会の状況が個人の幸不幸にこれほど深く食い込み、魂を打ち砕くのを目の当たりにするのは映画であっても凹んでしまう。

遺言が果たせて、ナワルの子どもたちジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)は、母のことが理解できてよかったと思う。自分たちの出生について事実を知った衝撃よりも、母との距離が縮まった収穫の方が大きい。生きているうちにそれが出来たらよかったとは思うけれど、生きているうちはなかなか話せることではないだろうし、話して良い方に転がるかどうかわかったものでもない。

それにしても、「約束」っていうのは、ある種の枷だと思う。ナワルが生き別れの息子に約束したこと(ナワル自身の誓い)も、ジャンヌが遺言を果たそうとするのも、愛があるからだ。愛に基づく約束とか誓いって果たさなかったり果たせなかったりすると、(愛がある限り)胸につかえることだろう。そういう意味では、この映画はハッピーエンディングといえると思う。枷から開放されて、めでたし。シモンもいくらか大人になって、めでたしめでたし。

おしまいに。『戦場でワルツを』を観ていてよかったと思った。もし、観てなかったら、ジャンヌはカナダからどこの国に行ったんだ???とわからないままだった。

公証人ルベル(レミー・ジラール)

INCENDIES
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
(こうちコミュニティシネマ 2012/05/29 高知県立美術館ホール)

予告編『グスコーブドリの伝記』

グスコーブドリの伝記今朝、小栗旬くんと居酒屋ディナーする夢を見た。まっこと、えい夢やった。その旬くんが主役の声を担当するアニメ『グスコーブドリの伝記』のポスターを映画館で発見し、もう嬉しくて堪らない。私のオールタイム日本映画ベストワンは『銀河鉄道の夜』なのだ。そのスタッフが再び結集して『グスコーブドリの伝記』を作ったということで、(聞いてはいたけれど)やはりポスターを目にすると胸の高鳴りを覚えた。

公式サイトにも行ってみた。音楽は細野さんじゃなくて正直なところ残念と思ってしまったが、ガラッと雰囲気が変わってイイかもしれないと思い直した。イーハトーブの自然や町並みなどの絵が美しい!飛行船やなんか、ワクワクする~。旬くんも少年の声だ!しかも公開日が七夕とは、星が好きな宮沢賢治にふさわしいではないか。う~む、これを観るまでは死ねない。

公式サイト
映画『グスコーブドリの伝記』

<追記>
そうそう、プロダクションノートで杉井ギサブロー監督が言っていたが、宮沢賢治には色んな面があるので三作品作りたいと思っているそうだ。『銀河鉄道の夜』は文学性、『グスコーブドリの伝記』は自然の声を聞いたりするような幻想性、あと、もう一作はユーモラスな面を取り出したいとのこと。それなら、三作目はオムニバス形式なんてどうだろう。賢治作品はあまり読んだことないので、いっぱい観れると嬉しいし、オムニバスに共通の登場人物やなにかのフックを作っておくと、より楽しめそうだ。