ドボンと落ちてなかなか抜け出せない。そういう体質ではないが、若いときに観た『ディア・ハンター』などは衝撃的で次の映画を観る気になれなかった。『旅芸人の記録』は、初めて観たときは全然わからなかったのだが、惹きつけられるものがあり4回くらい観た(入場料を払ったのは2回かな)。『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』は、ただただ楽しく、とあるシーンを観たくて(どのシーンか忘れてしまったが)何回も通った。『プリティー・イン・ピンク』は、ダッキーが歌うシーン(二つある)を観たくて通った(その際、同時上映の『トップ・ガン』はパス。後にヴァル・キルマー好きになったが、『トップ・ガン』ではノーマーク(^_^;)。名画座で上映されるたびに観たのは『タクシードライバー』『スケアクロウ』『エデンの東』『冒険者たち』。一度しか観ていないが、記憶だけで全シーン(のつもり)を順番に書き留めておくことが出来た『暗殺のオペラ』。原作まで手を伸ばしたのは、『戦慄の絆』『ある貴婦人の肖像』(そこからヘンリー・ジェイムズにドボン。)『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』『華麗なるギャツビー(ディカプリオ版)』など。サントラ、DVDまで買ったのも色々あるなぁ。総じて浅い沼にしか落ちていない。
比較的深い沼に嵌まったのがこれ。『大いなる遺産(1998)』だ。
監督のアルフォンソ・キュアロンは緑色が好きとのことで、初期の作品はよく緑を使っていたみたい。『大いなる遺産』ものっけから緑が印象的ですぐに引き込まれた。とにかく映像が美しい!音楽もジャンルはバラバラなのに不思議と統一感がある。イーサン・ホークとグィネス・パルトローはどちらも好きな俳優だし、ロバート・デ・ニーロにアン・バンクロフトも出演!イーサン・ホーク演じる主人公フィンが描いた絵として出てくるフランチェスコ・クレメンテによる作品群もイイ!(パンフレットによると、クレメンテさんは『グッド・ウィル・ハンティング』で主人公ウィルの催眠療法士に扮していたそうだ。)お話は原作がディケンズだからして悪いはずがないと言いたいところだが、当時ニフティの映画フォーラムでは中身がないスカスカの脚本と叩かれていた。しかし、この映画が大好きになっていた私は4回は観たし、CDもスコアとコンピレーションの両方を買って聴いていたし、原作も読んだ。もちろん、同監督の『天国の口、終わりの楽園』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』も追いかけた。ハリー・ポッターの二作目をキュアロンが監督しなかったら一作目で観るのを止めており、皆勤も果たせなかったと思う。未見の『リトル・プリンセス』、見たいな~。『ローマ』も。
そうそう、若作りは返って老けて見えることを教えてくれたのもこの映画だ。子ども時代(子役が演じる)から二十代の長きに渡る話で、成人前の十代を演じたイーサン・ホークはグィネス・パルトローよりマシだったが、グィネスは若作りの服が致命的に似合ってなかった。似合っていれば大人びた十代で行けたかもしれないのに。似合う服を身につけるって大切なんだと思った。
そういえば、クリス・クーパーをこの映画で好きになって、その後『アメリカン・ビューティー』を始め、よく見かけていたが、最近、どうしているんだろう。ラストシーン、海辺の家にフィンが帰ってきたのを(気まずい別れをしたのに)、よう来た、早う入れという感じでおしりをポンとたたくおじさん。よい役だった。
こんなのまで書いていた。→『大いなる遺産』場面再録