話が面白い。音楽がいい。透きとおった映像と演出に細やかなセンスを感じる。SFエンターテインメントと思っていたら、生きる喜びや希望まで抱かせてくれるとは嬉しい驚きだった。
(以下、いきなりネタバレです。)
死亡前8分間の他人の記憶の残像に入り込む装置だと思ったら、実はパラレルワールドへの転送装置だったとは、開発者であるラトレッジ博士(ジェフリー・ライト)さえ気がつかなかったことを、コルター・スティーヴンス大尉(ジェイク・ギレンホール)は実地に体験し証明した。私は証明の部分(グッドウィン大尉(ヴェラ・ファーミガ)がコルターからのメールを受信するシーン)は、生命維持装置をつけたコルターにもささやかな希望を感じさせるシーンになってはいたが理に勝ちすぎている気がして、その前のシーンで終わってもよかったと思った。
列車の中で漫談を聴いてさんざめく人々の笑顔や輝く樹木などが、コルターとクリスティーナ(ミシェル・モナハン)がともに別の世界で生きていく喜びを表している。このシーンを記憶にとどめ、あの不思議な物体(どこでどうつながっているのか、幾人もの「私」が形を変えて存在している)を見上げる主人公をラストシーンとしたい。
そうそう、主人公がアフガンで負傷したという設定はアメリカの今を写していていいし、コルターが電話で父と話すシーンも心に染みてよいと思ったけれど、コルターが別世界で身も心も乗っ取った人には悪いなぁと思ったことであった。
SOURCE CODE 監督:ダンカン・ジョーンズ/脚本:マーク・ゴードン、フィリップ・ルスレ/音楽:クリス・ベーコン
(2011/11/02 TOHOシネマズ高知8)
イップ・マン 葉問
さわやか~。
イップ・マン(ドニー・イェン)は立派だと思った。拳法の達人というだけでなく、何のための拳法なのか、技だけでは年を取ったときどうなるか、弟子を導く姿がよい。中国人を虫けらのように扱い、その拳法をバカにしている英国人ボクサーと闘い勝利するが、「今勝ったからと言って中国拳法がボクシングに勝るわけではない、その逆もまた然り。ただ、人間として対等であることをわかってほしくて戦った。」という。悪徳師匠の総元締め風にホン師匠(サモ・ハン・キンポー)が登場するが、それは拳法界の秩序を維持するためであり、ホンも英国人に上前をはねられながら侮辱に耐えていた。しっかりした娯楽作だけど、英国統治下の香港で中国人が如何に耐えたかが印象に残る。この映画の前編とも言える『イップ・マン序章』では、イップ・マンが日本軍に拳法を教えることを拒否したエピソードがあるらしいので、支配される側の誇りと気骨を描いた二部作なのではないだろうか。
ほとんど完璧といっていい人物像は鼻につくことがあるが、イップ・マンの場合はこんな人がいてほしいと心から思った。
葉問2 監督:ウィルソン・イップ
(2011/10/21 沖縄 桜坂劇場)
ソウル・キッチン
友だちは韓国映画だと思い、私はニューヨークが舞台と思い込んでいた。ドイツがこんなに人種のるつぼだったとは。
なんだかぼやけた映画だと思って観ていたけれど、催淫スパイスの効いたパーティあたりから可笑しくなって、観終わってからは大らかな映画を観たと不思議と満足感があった。おそらく、兄イリアス(モーリッツ・ブライブトロイ)、雇用人ルチア(アンナ・ベデルケ)、船を造っているおじいさんやバンドマンなどを分け隔てなく受け入れる主人公ジノス・カザンザキス(アダム・ボウスドウコス)の大らかな人柄がよかったのだと思う。また、彼らの集うレストラン、ソウル・キッチンが居心地がよさそうだったのもよかった。更に、包丁一本、さらしに巻かずに懐に入れてさすらう料理人シェイン・ヴァイス(ビロル・ユーネル)が、ウィスキー(?)をラッパ飲みしながら調理した皿も、教えてもらったジノスの皿も、どのお皿も美味しそうだったのもよかった。(気合いを入れて撮っていたと思う。)ジノスはギリシャ系の移民で、アメリカ発祥のソウルフルな音楽が好きで、ぎっくり腰をトルコ系移民の先生に治してもらう。彼の恋人ナディーン・クルーガー(フェリーネ・ロッガン)は中国人と浮気するし、これだけでも国際色豊かだ。うとうとしなかったら、もっと色んな国際色に気がついたかもしれない。ジノスにとって最も愛着のあるものはソウル・キッチンだが、私にとって愛着のあるものってなんだろう。そんなことを思いながら映画館を後にした。
投資家(ウド・キア)
SOUL KITCHEN 監督:ファティ・アキン
(2011/11/03 あたご劇場)
ステキな金縛り
いや~、じゅうぶん笑わせてもらった(^Q^)。142分は若干長いと思ったが、これだけ役者を使えば長くもなるか(?)。喜劇で大仰なアクションをされたとき、それが笑いや滑稽味につながらない場合「わざとらしい」と感じてしまう。その点、小佐野徹(中井貴一)、サイコー!!!安倍つくつく(市村正親)もよかった。
宝生エミ(深津絵里)
更科六兵衛(西田敏行)
監督:三谷幸喜
(2011/10/30 TOHOシネマズ高知7)