レ・ミゼラブル

クローズアップ、ババーーンン!歌唱、朗々。ストーリー、盤石。涙、涙。
スケール感があるように見せようとしているが、なんか作り物っぽく、カメラに落ち着きがないため、大河浪漫を見るときのうっとり感がない。見事なのは下水道の場面。自然と息を止めていたような気がする(^_^;。

人を生かすのも殺すのも人。ミリエル神父のお陰がいつの間にか神様のお陰になっている(ツッコミ(笑))。子ども向けの「ああ、無情」は小学校の時分の愛読書だったが、燭台を差し出した神父を思い出すとけっこう大きくなってからも泣けてくるのであった。

原作を読んでないからか、私にとってはジャベール警部が謎だ。どうして、人を信じたり情けをかけることができないのか。罪人のあいだで育ったと言っていたけれど、それだけではよくわからなかった。

ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)・・・・ヒューマニズムの具現者。
ジャベール警部(ラッセル・クロウ)・・・・(ミスキャスト気味)
ファンテーヌ(アン・ハサウェイ)・・・・人ごとじゃない転落人生。
コゼット(アマンダ・セイフライド)・・・・掘り下げが必要なキャラ。
マリウス(エディ・レッドメイン)・・・・掘り下げが必要なキャラ。
エポニーヌ(サマンサ・バークス)・・・・いじらしい(涙)。
テナルディエ(サーシャ・バロン・コーエン)/テナルディエ夫人(ヘレナ・ボナムカーター)・・・・金の亡者。懲りない夫婦。一つの幸せの形かもしれない。

LES MISERABLES
監督:トム・フーパー
(2012/12/24 TOHOシネマズ高知2)

大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]

う~ん、家系を絶やさないための子作りって大変だなぁ。綱吉(菅野美穂)も右衛門佐(堺雅人)も各々の生殖活動、お疲れさま。でも、二人で愛の営みができてよかったね。生きるため、生かすための営みか~。なかなかの浪漫だ。
それにしても女性将軍は、男性将軍に比べて分が悪い。自分で産まなくちゃならないなんて、とんでもない負担だ。男性将軍だったら正室、側室と産んでくれる人はいっぱいいるのに。それに、どうしてそこまで血縁にこだわるかねぇ。ダライ・ラマ方式でもいいじゃん。アマゾネス方式でも・・・・、知らんけど。
他人に平然と死罪を申しつけることのできる権力者が、システムの改革には手が出せない不自由さよ。まず、綱吉自身が既成制度から脱却できていないし、親である桂昌院(西田敏行)を切れない人情の人であるため、改革の「か」の字を思いつきさえしないのだ。
一見権力者、実は子作りマシーンの悲哀は、菅野美穂の熱演で充分見せてもらった。柳沢吉保(尾野真千子)と伝兵衛(要潤)など役者がよかった。伝兵衛、可愛く見えたよ!要潤って色々できるのね。

監督:金子文紀
(2012/12/23 TOHOシネマズ高知5)

ホビット 思いがけない冒険

むむむ、これは・・・・、長い。イマイチだ。
『ロード・オブ・ザ・リング』は、旅の仲間の描き分けがよくできていた。9人が異なる種族だったことも見分けやすさにつながったかもしれない。ところが、今回は、魔法使いとホビットは一人ずつ、あとの13人はみんなドワーフで全員の名前を言ってくれるのはいいが、誰が誰やら。キャラクターを描き分ける気がまるでなさそう(?)。
それから戦いのシーンが多く疲れる。旅の目的も散々説明してくれたにもかかわらず、なんだかよくわからない。
面白かったのは、ビルボが旅に出るまでと、ビルボの機転でトロルが石になるところと、岩山同士が岩を投げつけて壊しっこするところと、トーリンに足手まといと言われたビルボが可哀想だったところと、ビルボとゴラムとのナゾナゾごっこと、ゴラムの涙を見てビルボが殺生をやめるところくらいだ。ビルボとゴラムのシーンはとても引き締まっていた(ハイライト)。
この調子で三部作???う~ん、う~ん、う~ん。ホビットと怒りんぼの魔法使いが好きなので、とりあえず観る(覚悟はできた)けど。

ビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)/トーリン(リチャード・アーミティッジ)/灰色のガンダルフ(イアン・マッケラン)/ガラドリエル(ケイト・ブランシェット)/エルロンド卿(ヒューゴ・ウィービング)/ゴラム(アンディ・サーキス)

THE HOBBIT: AN UNEXPECTED JOURNEY
監督:ピーター・ジャクソン
(2012/12/15 TOHOシネマズ高知5 字幕版)

007 スカイフォール(2回目)

坪井俊弘さんのツイート@TcinemaholicTが面白くて、ときどきのぞいているんだけど、ブログ「映画の見方がわかりません」の方の記事 【強力なネタバレ】『スカイフォール』の謎でM(ジュディ・デンチ)はボンド(ダニエル・クレイグ)の母親だと書いていらっしゃる。

スカイフォールでボンドとMを出迎えたキンケイドは、武器庫でボンドの父が残したライフルを手渡す。そのライフルには「A/B」の刻印がある。その刻印が映し出されたあと、そのままカメラはMの表情をとらえる。「ボンドの父が残したライフル」なのだから、ボンドの表情をとらえるはずが、なぜかカメラが次に要求したものはMの表情だった。
(省略)

幼少時代のボンドが敵から逃れるために隠れていたという屋敷の隠しトンネルを、Mは深い感慨と共に眺める。その深い感慨は、屋敷から荒涼とした景色を眺めるMにも結びつく。ライフルの描写から、Mの感慨はいっそう深まるのだ。映画は、Mの深まる感慨をとらえていく。
(省略)

『カジノ・ロワイヤル』でジェームズ・ボンドは突然Mの自宅に現れる。どうして家がわかったのかというMに、あなたの本名も「M」の意味も知っていますとボンドは言うのだ。

(【強力なネタバレ】『スカイフォール』の謎より)

なるほどー!と感心した。
私が母親かもと思ったのは、スカイフォール途上でのボンドとの会話からだ。ボンドが「過去への旅だ」と言って、Mは「ご両親はあなたがいくつのときに亡くなったの?」とたずねるが、「全部知ってるくせに」と返され、「諜報員には孤児を採用することが多いの」と言う。諜報組織の上司と部下の会話として何の違和感もないけど、私は「調べたことだけじゃなく生まれてからのことをまるごと知ってるの?もしかして母親?」と思ったのだ(変な話)。
本気で思っているわけではないから、すぐ忘れて、スカイフォールでの感慨深げなMの様子も「過去への旅」とは気がつかず、Mが死んだときのボンドの嘆きようを見て「もしかして母親?」と少し本気になったのだった。
それで坪井さんの書かれたことと、自分でも確認したかったことがあったので、2回目、行ってきた。

坪井さんが書かれたことは、そのとおりだった。ライフルの後、Mがどんな様子かを狙って撮っている。
隠しトンネルを見つめるMは、少年ボンドが隠れていた様子を想像し、そのとき自分が何をしていたかを思っているようでもあった。

確認したかったことは二つあって、一つはMが死にぎわに「私はひとつだけ正しかった」と言うのだが、それは何かということだ。これは2回目でもよくわからなかった。限定されてないようなので、いろいろに解釈できると思う。私は直接的には再試験不合格のボンドを現場復帰させたことで、もっと大きな意味合いではボンドを信じたことだと思う。Mの仕事を考えれば、仲間うちでも疑心暗鬼になることはあるだろうし、また、重要な判断を迫られて後に悔やんだこともあったと思う(そんな素振りは微塵も見せないが)。不安や迷いは、あれでよかった、ああするよりほかなかったと自分に言い聞かせてきたのではないか。そんな中で完全に正しかったと確認できて死ねるとは、・・・・・・ジェームズ・ボンドは親孝行だ(ToT)。

もう一つ確認したかったことは、Mが書いた追悼文をボンド自身は気に入ってなかったのだが、どこが気に入らなかったのか又はどう書いてほしかったのかということだ。Mが(スコットランド人と書ければよかったけど)英国人の鑑と書いたことが気に入らないのねみたいに言う。だけど、いや、そこじゃなくてとボンドは否定する。心理テストの連想問題で「国」というのに「イングランド」と答えていたし、こだわりはないのかも(というか故郷が本当に嫌だったのかも)。で、結局2回目でもよくわからなかった。想像するにMの追悼文はとおり一辺倒で事務的にすら感じられるものだったのではないだろうか。だから、もうちょっと悲しんでくれてもと拗ねたんじゃないかな(笑)。

ショーン・コネリーもロジャー・ムーアもティモシー・ダルトンもあまり好きではなかったので、007にはまったく関心がなかったけれど(二代目のジョージ・レーゼンビーは知らなくてゴメン)、ピアース・ブロスナンのおかげで007に開眼した。それも五代目の二作目『トォモロー・ネバー・ダイ』からだ。『トォモロー・ネバー・ダイ』では香港でのバイク・アクションが、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』ではテムズ川のボートチェイスが、『ダイ・アナザー・デイ』ではすごくバカバカしくて笑える楽しさだったことが印象に残っている。(何代目だっけ?クリストファー・ウォーケンが悪役のやつも観ていたと思う。)そういう007もよかったので、今回笑えるところがけっこうあるのが嬉しい。

『カジノ・ロワイアル』の感想では「ボンドもこのまま肉体派路線でいくのか、それとも仕事に慣れてきてスマートに洗練されていくのか、演技力があるから楽しみです。」と、『慰めの報酬』では「前編からするとかなり感情を抑えたボンドだったような気がするし、今後も1作ごとにスパイらしく成長していって、Mともあうんの呼吸が出来ていくのかなぁ。」と書いていたので、なんか私の思惑どおりじゃん~(?)。
今後は、可哀想なボンドを垣間見せつつ、イヴ(ナオミ・ハリス)やQ(ベン・ウィショー)とウィットに富んだ会話も増えそうだ(希望的予想)。

(2012/12/05 TOHOシネマズ高知6 字幕版)
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