坪井俊弘さんのツイート@TcinemaholicTが面白くて、ときどきのぞいているんだけど、ブログ「映画の見方がわかりません」の方の記事 【強力なネタバレ】『スカイフォール』の謎でM(ジュディ・デンチ)はボンド(ダニエル・クレイグ)の母親だと書いていらっしゃる。
スカイフォールでボンドとMを出迎えたキンケイドは、武器庫でボンドの父が残したライフルを手渡す。そのライフルには「A/B」の刻印がある。その刻印が映し出されたあと、そのままカメラはMの表情をとらえる。「ボンドの父が残したライフル」なのだから、ボンドの表情をとらえるはずが、なぜかカメラが次に要求したものはMの表情だった。
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幼少時代のボンドが敵から逃れるために隠れていたという屋敷の隠しトンネルを、Mは深い感慨と共に眺める。その深い感慨は、屋敷から荒涼とした景色を眺めるMにも結びつく。ライフルの描写から、Mの感慨はいっそう深まるのだ。映画は、Mの深まる感慨をとらえていく。
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『カジノ・ロワイヤル』でジェームズ・ボンドは突然Mの自宅に現れる。どうして家がわかったのかというMに、あなたの本名も「M」の意味も知っていますとボンドは言うのだ。
(【強力なネタバレ】『スカイフォール』の謎より)
なるほどー!と感心した。
私が母親かもと思ったのは、スカイフォール途上でのボンドとの会話からだ。ボンドが「過去への旅だ」と言って、Mは「ご両親はあなたがいくつのときに亡くなったの?」とたずねるが、「全部知ってるくせに」と返され、「諜報員には孤児を採用することが多いの」と言う。諜報組織の上司と部下の会話として何の違和感もないけど、私は「調べたことだけじゃなく生まれてからのことをまるごと知ってるの?もしかして母親?」と思ったのだ(変な話)。
本気で思っているわけではないから、すぐ忘れて、スカイフォールでの感慨深げなMの様子も「過去への旅」とは気がつかず、Mが死んだときのボンドの嘆きようを見て「もしかして母親?」と少し本気になったのだった。
それで坪井さんの書かれたことと、自分でも確認したかったことがあったので、2回目、行ってきた。
坪井さんが書かれたことは、そのとおりだった。ライフルの後、Mがどんな様子かを狙って撮っている。
隠しトンネルを見つめるMは、少年ボンドが隠れていた様子を想像し、そのとき自分が何をしていたかを思っているようでもあった。
確認したかったことは二つあって、一つはMが死にぎわに「私はひとつだけ正しかった」と言うのだが、それは何かということだ。これは2回目でもよくわからなかった。限定されてないようなので、いろいろに解釈できると思う。私は直接的には再試験不合格のボンドを現場復帰させたことで、もっと大きな意味合いではボンドを信じたことだと思う。Mの仕事を考えれば、仲間うちでも疑心暗鬼になることはあるだろうし、また、重要な判断を迫られて後に悔やんだこともあったと思う(そんな素振りは微塵も見せないが)。不安や迷いは、あれでよかった、ああするよりほかなかったと自分に言い聞かせてきたのではないか。そんな中で完全に正しかったと確認できて死ねるとは、・・・・・・ジェームズ・ボンドは親孝行だ(ToT)。
もう一つ確認したかったことは、Mが書いた追悼文をボンド自身は気に入ってなかったのだが、どこが気に入らなかったのか又はどう書いてほしかったのかということだ。Mが(スコットランド人と書ければよかったけど)英国人の鑑と書いたことが気に入らないのねみたいに言う。だけど、いや、そこじゃなくてとボンドは否定する。心理テストの連想問題で「国」というのに「イングランド」と答えていたし、こだわりはないのかも(というか故郷が本当に嫌だったのかも)。で、結局2回目でもよくわからなかった。想像するにMの追悼文はとおり一辺倒で事務的にすら感じられるものだったのではないだろうか。だから、もうちょっと悲しんでくれてもと拗ねたんじゃないかな(笑)。
ショーン・コネリーもロジャー・ムーアもティモシー・ダルトンもあまり好きではなかったので、007にはまったく関心がなかったけれど(二代目のジョージ・レーゼンビーは知らなくてゴメン)、ピアース・ブロスナンのおかげで007に開眼した。それも五代目の二作目『トォモロー・ネバー・ダイ』からだ。『トォモロー・ネバー・ダイ』では香港でのバイク・アクションが、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』ではテムズ川のボートチェイスが、『ダイ・アナザー・デイ』ではすごくバカバカしくて笑える楽しさだったことが印象に残っている。(何代目だっけ?クリストファー・ウォーケンが悪役のやつも観ていたと思う。)そういう007もよかったので、今回笑えるところがけっこうあるのが嬉しい。
『カジノ・ロワイアル』の感想では「ボンドもこのまま肉体派路線でいくのか、それとも仕事に慣れてきてスマートに洗練されていくのか、演技力があるから楽しみです。」と、『慰めの報酬』では「前編からするとかなり感情を抑えたボンドだったような気がするし、今後も1作ごとにスパイらしく成長していって、Mともあうんの呼吸が出来ていくのかなぁ。」と書いていたので、なんか私の思惑どおりじゃん~(?)。
今後は、可哀想なボンドを垣間見せつつ、イヴ(ナオミ・ハリス)やQ(ベン・ウィショー)とウィットに富んだ会話も増えそうだ(希望的予想)。
(2012/12/05 TOHOシネマズ高知6 字幕版)
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