[目次]ホームズ物語

作品

東京図書のシャーロック・ホームズ全集(コナン・ドイル著/ベアリング=グールド解説と注/小池滋監訳)より、事件の起きた順番に。

カッコ内は、
数字=ホームズの年齢(定説1854年1月6日生まれ)
A=冒険(12編)
M=回想(11編)
R=帰還(13編)
B=挨拶(8編)
C=事件簿(12編)
♥=好き
ドイルNo.=ドイル自選(事件簿を除く)短編ベスト12中の順位

  1. グロリア・スコット号(20/M)
  2. マスグレイヴ家の儀式(25/M/ドイル11)
  3. 緋色の研究(27/長編/♥)
  4. まだらの紐(29/A/ドイル1)
  5. 入院患者(32/M)
  6. 独身貴族(32/A)
  7. 第二のしみ(32/R/ドイル8)
  8. ライゲイトの地主(33/M/♥/ドイル12)
  9. ボヘミアの醜聞(33/A/♥/ドイル5)
  10. 唇の曲がった男(33/A)
  11. 五つのオレンジの種(33/A/ドイル7)
  12. 花婿失踪事件(33/A)
  13. 赤毛組合(33/A/♥/ドイル2)
  14. 瀕死の探偵(33/B/♥)
  15. 青いガーネット(33/A/♥)
  16. 恐怖の谷(34/長編/♥)
  17. 黄色い顔(34/M)
  18. ギリシャ語通訳(34/M)
  19. 四つの署名(34/長編/♥)
  20. バスカヴィル家の犬(34/長編/♥)
  21. ぶな屋敷(35/A)
  22. ボスコム谷の謎(35/A)
  23. 株式仲買人(35/M)
  24. 海軍条約(35/M/♥)
  25. ボール箱事件(35/B)
  26. 技師の親指(35/A)
  27. せむし男(35/M)
  28. ウイステリア荘(36/B)
  29. シルヴァー・ブレイズ(36/M/♥)
  30. 緑柱石の宝冠(36/A)
  31. 最後の事件(37/M/♥/ドイル4)
  32. 空き家の冒険(40/R/♥/ドイル6)
  33. 金縁の鼻めがね(40/R)
  34. 三人の学生(41/R)
  35. 一人きりの自転車乗り(41/R/♥)
  36. ブラック・ピーター(41/R)
  37. ノーウッドの建築業者(41/R)
  38. ブルース・パーティントン型設計図(41/B)
  39. 覆面の下宿人(42/C)
  40. サセックスの吸血鬼(42/C)
  41. スリークオーターの失跡(42/R)
  42. アベイ農場(43/R)
  43. 悪魔の足(43/B/ドイル9)
  44. 踊る人形(44/R/♥/ドイル3)
  45. 退職した絵具屋(44/C)
  46. チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン(44~45/R/♥)
  47. 六つのナポレオン(46/R)
  48. ソア橋事件(46/C)
  49. プライアリイ・スクール(47/R/ドイル10)
  50. ショスコム・オールド・プレイス(48/C)
  51. 三人ガリデブ(48/C/♥)
  52. レイディ・フランセス・カーファックスの失跡(48/B)
  53. 有名な依頼人(48/C)
  54. 赤い輪(48/B)
  55. 白面の兵士(49/C)
  56. スリー・ゲイブルズ(49/C)
  57. マザリンの宝石(49/C)
  58. 這う男(49/C)
  59. ライオンのたてがみ(55/C)
  60. 最後の挨拶(60/B)

BBC「シャーロック」

その他

まだらの紐

ドイル卿の自選短編ベストワンに輝く「まだらの紐」。読者の評価もかなり高い。私もとても面白いと思っている。ヘレン・ストーナー嬢が事件の依頼をして帰った後、その義父のロイロット博士が乗り込んできて「係わると、こうだぞ」とばかりに火掻き棒を素手で曲げて行ったのを、ホームズが反対に曲げてもどすのも可笑しい(笑)。ただし、事件そのものは薄気味悪くて苦手なのだ。紐の正体も正体だし(^_^;。

ホームズのセリフ「紐だ!まだらの紐だ!」の最初の「紐」に「バンド」とふりがなが振られているのがありがたい。バンドには紐と群(どちらの意味も日本語として使われている)という意味があることから、ストーナー嬢とロイロット博士が暮らす屋敷の庭先にジプシーがたむろしているという描写は、ホームズと読者を(ジプシーの一群が怪しいと)ミスリードする作用があったと推測できる。

それにしても娘が結婚するとその財産を使えなくなるので、結婚阻止のために殺すとは酷いものだ。
「花婿失踪事件」では、義父が変装し、娘と婚約して他の者と結婚させないよう仕組んでいた。「ぶな屋敷」では実の娘に財産があり、娘に恋人ができると監禁し、娘のそっくりさんを雇い恋人を追い払わせていた。

バスカヴィル家の犬

やはり面白い!
なにせ日本シャーロック・ホームズ・クラブの人気投票のたびに第1位になっている(と思う)。
ベアリング=グールドも文献学的覚書で「この物語は、ホームズが物語を支配している、というよりは物語がホームズを支配している唯一のホームズ物語であるとよく言われる。いずれにせよ批評家も一般的に、ホームズ物語の四つの長編のうち、最大傑作であるとしている。」と書いている。
おそらく、もっとも推理小説らしいのだと思う。殺人事件であり、犯人の動機と手法がハッキリしているし、怪しい人物も数人いる。手がかりが散りばめられているので、読者もホームズ張りの推理をして楽しめるのではないだろうか。おまけにダートムーアの湿気やバスカヴィル家の魔犬伝説が、不気味な雰囲気をかもし出している。そして、他の事件で忙しいホームズに代わってダートムーアに派遣されたワトソンが大活躍なのだ。

ムーアで思い出すのは「嵐が丘」。ダートムーアはイングランド南西部のデボン州で、「嵐が丘」のムーアは北部のヨークシャー州だそうな。どちらもヒースが咲くみたい。(荒れ野はヒースに任せなさい?)
ヒースと言えば、「嵐が丘」のヒースクリフか、ヒース・レジャーか、吉田秋生の「カリフォルニア物語」の主人公ヒースというところだけど、検索したら他のヒースがヒットしてビックリ。

  • ヒースクリフ・セイバーヘーゲン(ゲームのキャラクター?)
  • SAOのヒースクリフ(「ソードアート・オンライン」というライトノベルの登場人物)

いろいろググってみたら・・・・。

  • ムーア(地形)=荒地、湿原
  • ヒース(地形、植物)=荒地、ジャノメエリカ、ヘザー

wikiによると「ヒース(heath)は、本来はイギリス北部、アイルランドなどにおける荒地のことで、独特の背の低い植物が群生する。」とあったので、『P.S.アイラヴユー』で主人公(ヒラリー・スワンク)が、後の夫(ジェラルド・バトラー)に出会ったアイルランドで咲いていた紫の花はヒースだったのかもしれない。

バスカヴィルからこんなとこまで来たか(笑)。

瀕死の探偵

ワトソンはホームズに本当にひどい目にあわされていると思う。ハドソンさんにホームズが死にかけていると言われてベイカー街に駆けつけ、げっそり衰弱し精神錯乱まで起こしているホームズの様子に胸を痛める姿が気の毒だ。気の毒ではあるが、この一編に漂うそこはかとない可笑しさが、初めて読んだ小学生の頃から大好きだった。推理小説としてはイマイチなんだろうけど、ワトソンの誠実さやホームズのケレンがいっぱいで面白い。

それにしてもホームズは大した役者だ。「ボヘミアの醜聞」でワトソンは書いていたのだった。

彼が犯罪の専門家になったことにより、科学界は鋭敏な理論家を失い、同時に演劇界もまた、優れた俳優を失ったのである。(東京図書、シャーロック・ホームズ全集第5巻P156、日暮雅通訳)

シャーロッキアンの研究によるとアメリカで俳優修業をしていた時期があるとのことだ。

[追記]
なんと、Weblio辞書に例文として載っていた。
The stage lost a fine actor, even as science lost an acute reasoner, when he became a specialist in crime.